同棲中の恋人とのセックスレスに悩む一顕。報われないと知りながら、一緒に暮らす幼馴染を想い続けている整。ある日、一顕が送信したメールが手違いで整に届いたことから、互いの正体を知らぬまま、ふたりの奇妙な交流が始まった。好きだから触れてほしい、抱き合いたい——互いに満たされない愛を抱えながら、徐々に近づいていくふたりの距離。降り続く雨はやがて大きな流れとなってふたりを飲み込んでいく——。
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「―は?」 と声が出た。荻原は「え?」と洩らした。同時に。 視線を交わす。整の目も、荻原と同じぐらい見開かれているのだろう。まさか、と声にならない言葉。ふたりの時間が石のように固まる。 お前、が?
「ぶつけたのって、どの指だ?」 「え、右の、人差し指だけど」 「靴下脱いで」 整の耳には、服を脱いで、ぐらい刺激的に響いた。
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